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2015年10月25日日曜日

カメラのファインダー描写について

別に今に始まったことじゃないんですけども、アニメやマンガで、カメラのファインダーを覗き込んだ様子を描写してるシーンがあると、どうにもおかしな表示になってるのが多いんですよね。

現代の話でデジカメ使ってたりすると、現物すぐ参照できるせいか、わりとおかしくないのもあるんです。おかしいのも多いけど。
古いカメラになると、だいぶ苦しいのが増える。
まあ、事実と外してでも視聴者が飲み込みやすい描写にしてるとか、そういう都合があるのかもしれないなとも思いますが。

とはいえ、カメラ好きででもなければ、昔のカメラのファインダー内なんて知らない方が普通だとも思います。
マンガとかイラスト描いたりする人のために役立つかも知れないんで、私の知ってる範囲でまとめてみます。



特定のカメラのファインダーそのものじゃなく、時代に応じて想定されるファインダー表示を描いてます。
「正しい」ファインダーをズバリ描いているわけではないです。
同じ時代でも、メーカーや製品によってファインダー表示は違います。

絵やマンガの中に特定のカメラだと設定してるとか、設定しないまでもモデルにしたカメラがあるのなら、そのカメラの実物のファインダーを覗くのが唯一の正解です。

「舞台が80年代なのに、21世紀のデジカメのファインダー像を描いてしまってる」というような時代ズレ、「外見はレンジファインダーカメラなのに、ファインダーが一眼レフ」というような方式間違い、そういったことのチェックには使えると思います。


一眼レフカメラ

一眼レフカメラとはどういうカメラか、という説明はいらないと思うので省略。

ただし、デジタルのミラーレス一眼はここでは含みません。
デジタル一眼レフを、液晶ファインダーで使う場合も含みません。
ソニー製を中心に、外見は一眼レフカメラっぽいけど、覗きこんだら電子ファインダーが入ってるものも含みません。

フィルム一眼レフ、およびデジタル一眼レフの光学ファインダーについてです。


あ、一眼レフのファインダーで、シャッターを切った瞬間に見える様子は、「真っ暗になって一瞬で戻る」だけです。
黎明期に、「暗くなってから手で戻す」とか「シャッターボタンから指を離すと戻る」とかがあるだけで、以後ずっと現在まで変わりません。

「複数枚の羽根が画面外から出てきてそれが中央へと向けて閉じていき、閉じたら逆に開く」というのは、演出として非常によくありますが、そう見えることはありません。
あれは間違いあるいはマンガ表現です。

50年代・黎明期のウェストレベルファインダー

国産の一眼レフカメラが登場するのは、1952年(昭和27年)発売のアサヒフレックスⅠ型からです。
旭光学工業、後にペンタックスになって、現リコーイメージングのPENTAXブランド製品群のご先祖です。

とはいえ、50年代にはあまり一眼レフカメラは普及してません。
1950年代前半は、リコーが仕掛けた二眼レフカメラの価格破壊と大ブームが起きてます。
ニコンやキヤノンなどは、戦前から王者だったライカに追い付け追い越せと、距離系連動式(レンジファインダー)カメラを50年代いっぱいくらいまで作ってました。
他にももっと簡素なカメラもあったりするんで、50年代にカメラを登場させるのは、考証ちゃんとしないとツッコミどころだらけになりそうです。気をつけて。

で、50年代半ばまでに、アサヒフレックスのような一眼レフカメラを登場させる場合、まず、今の一眼レフのように、カメラを顔の高さに持ってきて覗きこむような使い方じゃありません。
ウェストレベルファインダーといいまして、カメラを腰のあたりに構えて、上からファインダーを覗き込みます。

ファインダーの表示は、次のアイレベルファインダー一眼レフと大体同じですが、左右が反転してます。


二眼レフカメラも、ウェストレベルファインダーを使ってることが多いです。
私二眼レフは正直全然詳しくないから、二眼に触れるのはこの1行だけとさせていただきます。

50年代末・アイレベルファインダー一眼レフ

1957年(昭和32年)に、旭光学工業がアサヒペンタックスAPを発売します。
これは、今の一眼レフカメラと同様、後ろから覗き込むと上下も左右も反転していない像が見える、アイレベルファインダーを搭載しました。
ここから、今想像する「一眼レフのファインダー」という形ができます。

最初の頃の一眼レフがどんな見え方かというと、こんなのだと考えられます。
初期一眼レフ、ピントが合った状態
初期一眼レフ・ピントがあってない状態
要は、特に表示がありません。

注意するとすれば、ファインダーのアスペクト比が3:2であること。
テレビ画面一杯だと16:9になっちゃって、実際より横長です。

ただし、比率3:2は135フィルム、今でも買えるあのポピュラーな写真フィルムを使った場合で、昔はもっと色んな種類のフィルムがありました。
特に、120フィルムを使う中判カメラというやつは、風景写真家とかが高画質の写真を撮るためによく使っていました。これは高さ60mmに、幅は45mm・60mm・70mmなど、カメラ側で使い分けます。
大型カメラを登場させる場合は注意。


それから、ピントが合ってないと像がボケるのは、一眼レフと二眼レフです。それと、デジカメの液晶ファインダー。
レンジファインダーカメラや、フィルム時代のコンパクトカメラは、ファインダーではボケません
ここ間違いやすい。

50年代末以降 マイクロプリズムスクリーン

で、上のような、単に全面がボケたりピントが合って見えたりとかするだけだと、ピント合わせるの難しいんですね。

ピント確認をしやすいファインダーが開発されます。
フォーカシングスクリーンという部品に工夫を凝らして、ピントが外れていることがよくわかるようにしています。

工夫の代表例のひとつが、マイクロプリズムスクリーンというもの。
ピント合ってないとこういう感じに見えます。

マイクロプリズムスクリーン・ピントが合ってない状態
マイクロプリズムスクリーンは、ピントが合ってない時に、細かく互い違いの陰ができるようになります。
ピントが合ったら、この陰がすっと消えて、一様に見えるようになります。


私が子供の頃、親がペトリV6というカメラを持っていたんですが、このマイクロプリズムスクリーンでした。1965年発売。
1964年のアサヒペンタックスSPもこれ。
ちょっと古めのイメージかな。60年代っぽいというか。
でも、1971年発売のキヤノンの高級機F-1もこれだったそうで、何かメーカーがコダワリもって選んでたのかも。


60年代以降 スプリットマイクロスクリーン

スプリットマイクロスクリーンは非常にポピュラーです。
一眼レフカメラがマニュアルフォーカスだった80年代前半まで、主流はこれでした。

ピントが合ってないと以下のように見えます。
スプリットマイクロスクリーン・ピントが合ってない状態

丸の外周部は、マイクロプリズムです。

内側のスプリット部がポイント。
ピントが外れていると、中央のスプリット部で像がズレます。
ピントを合わせていくにつれて、シャープに見えてくると同時に、像のズレもなくなっていき、やがてぴったり合致します。

スプリットとマイクロプリズムを両方備えているからスプリットマイクロ。

ピントが合うと、全体に一様に見えるようになります。
といってもまあ、実際にはピントがあっていても、スプリットやプリズムの外周円が見えます。完全に消えはしません。

だから、ピントが合った状態を次のように描いちゃっていいと思います。

スプリットマイクロスクリーン・ピント合ってる表現
実際のマンガでも、◎に横線の表現はよく見ますね。


ちなみに、スプリットが水平じゃなくて斜め45度に切れているものもあります。
私が使ったことあるカメラだと、リコーXR500はそうでした。


60年代後半 内蔵露出計

カメラには、露出というのがあります。
フィルムに適切な量の光を送り込まないと、明るく写り過ぎて真っ白に飛んだり、暗すぎて何が写ってるかわからなくなります。
今のカメラでは、勝手にカメラが計って適当に露出を調整してくれますが、そこまで自動化されるまで長く時間がかかりました。

60年代前半までの一眼レフカメラでは、カメラとは別に露出計という、明るさを測る装置を使っていました。
しかし、同時に使うものなんだからカメラに内蔵したいと思うのが当然。

60年代半ばになって、一眼レフカメラのレンズを通ってカメラ内に入った光の量を測定し、それをユーザーに表示するカメラが出現します。
1963年に東京光学機械(現トプコン)から出た、トプコンREスーパーという機種が嚆矢です。

私の持ってたリコーXR500は、1979年とかなり後の製品ですが、「単に露出計だけ入っていて、露出の操作はすべて手動」という、60年代半ばと同じ機構の製品でした。
こういう手動カメラは、廉価品だとか、写真技術の学習用などに長く作られました。

そのXR500の露出計は、こういうシンプルな針で表示されていました。

針式露出計・2針式

露出は、「絞り」と「シャッタースピード」のふたつの要素で設定します。

明るさが明るいほど針が上に上がる。
絞りを開くと、針が上がる。絞りを絞ると、針が下がる。
シャッタースピードを早くすると、○針が上がる。遅くすると、○針が下がる。
針が○針の中に入れば、露出はちょうどいい。

針式露出計・固定表示式
単に、露出オーバーかアンダーかだけ表示するタイプもあります。
+側だと露出オーバーだから、絞りを絞るかシャッタースピードを早くすると針が下る。
-側だと露出アンダーだから、絞りを開けるかシャッタースピードを遅くすると針が上がる。
針が水平だと、適正露出。

PENTAX SPがこれみたいです。1973年の大ヒットカメラで、カメラ店のジャンクコーナーにいまだにゴロゴロ転がってます。


なお、露出計が入ることで、カメラに電池を入れるようになりました。
今もあるSR44みたいな酸化銀電池とか、当時は売られていた水銀電池とかを入れます。

でも、電池切れになっても露出計が動かなくなるだけで、撮影は引き続き行えます。他の部分はすべて機械的に動作してるので、電池はいりません。
次の自動露出世代からは、電池切れでシャッターが動かなくなる(ただし特定のシャッター速度だけは電池が無くても使える)とか、電気制御の部分が出てきます。

慣れた人なら、露出計なしでも天気とか日のあたり方で大体の露出を目測できるので、それを理由に露出計以外全機械式のカメラを好んで使う人もいました。
カメラ通の人物を登場させるなら、そんなことさせてもいいかも。


70年代 自動露出一眼レフカメラ

露出計が内蔵できるようになったら、今度はいちいち露出を手動設定するんじゃなくて、自動設定できるようにならんかな、と思うところです。
1971年にそれが完成し、自動露出機能を備えたアサヒペンタックスESが発売されました。

自動露出がついたら、別に露出計の表示はいらなくなります。勝手に合わせてしまうから。
しかしまあ、自動露出も手動露出もできるカメラが多く、手動露出用に表示が残ります。
また、当時一眼レフを使っていたようなカメラに詳しい人の心理として、「自動だからってどういう値になってるか不明では気持ち悪い」と思うこともあり、表示自体の省略は少ないと思います。
省略してるとしたら、70年代後半以後の自動露出専用廉価モデルだと思います。

また、自動露出の計算用にちょっとしたコンピューターが内蔵され始めてもいて、だんだんカメラが電子化しはじめます。
ファインダー内表示も、LEDによる表示が出始めてきます。


それから、70年代に一眼レフに自動露出が導入され始めた頃、業界はふたつの派閥にわかれました。
露出は「絞り」と「シャッタースピード」で制御しますが、当時の技術では、両方自動制御することはできませんでした。
なので、「絞りはユーザーが決めて、シャッタースピードを自動で決める」という絞り優先AEと、「シャッタースピードをユーザーが決めて、絞りを自動で決める」という速度優先AE、どちらかになります。

各メーカーの考え方とか過去作ってきた製品のしがらみとかで、陣営が分かれました。
ニコン・ペンタックス・ミノルタなどは絞り優先AE、キヤノン・コニカなどは速度優先AEでした。
当然ながら、表示も分かれてしまいます。


まず、絞り優先AEカメラの場合。

絞り優先AE一眼レフカメラ
まず、自動設定されるシャッタースピードが表示されています。
緑LEDがついてるシャッタースピードに自動設定されています。

絞りは、というと、上に表示されてる 2.8 がそれです。
ただこの表示というのは、レンズの付け根にある絞り設定リングに刻んである文字を、直接覗きこむように投影してます。電気的な表示ではありません。
(これはつけるとコストがかかるので、高級モデルにある機構です。廉価モデルだと絞りはファインダー内に表示されません)

なぜ絞りは電気的表示じゃなくてそんな物理的な表示なのかは、なぜ絞り優先AEのカメラになってしまったかに繋がる理由があるんですが、まあこれは略。
電気的なデータとして絞りの値を取得できなかったから、電気的な表示もできないんです。


シャッタースピードの表示の方法は、この他にもいろいろあります。
LED表示じゃなくて、文字の並びを針で指し示すとか。
ファインダー枠外に文字を抜いてあって、裏のLEDが点灯すると見えるとか。
例は左側にしてますが、右側のもあると思います。

PENTAX MEというよく売れたカメラが、左側でLED式だったようです。

速度優先AE一眼レフカメラ
速度優先だと、当然表示するのは絞りになりますね。

速度優先陣営でよく売れた、CANON AE-1が、右側で針式だったようです。
AE-1がモデルチェンジしてAE-1Pになったら、LED式になったみたいですね。


一部の高級機では、絞りもシャッター速度も両方表示していたようです。CANON EFとか。
CANON A-1なんかもそうなんですが、これは次の電子化カメラの表示に近いです。


絞り優先にせよ速度優先にせよ、初心者向けの廉価モデルとして、「オート露出のみ」「値の表示はしない」というモデルがあります。
ただ、その場合でも、「あまりにも暗すぎる」「あまりにも明るすぎる」といった、オートで対応しきれない状態にあることを示す表示は必要です。
そういう場合は、ファインダーの枠外下に赤いLEDが点灯するとか、簡素な表示にされそうです。

「70~80年代に、初心者向けの安い一眼レフを親に買ってもらった高校生」とか、そういう設定があるなら、そういう簡素な表示が適切かもしれません。
基本的に、ごちゃごちゃ色々表示してるほど高いカメラです。

80年代 プラ外装電子カメラ

70年代の絞り・速度優先AEの争いも一段落して、80年代には、絞りも速度も自動で決めるプログラムオートが出てきます。
今のデジタル一眼レフでも、プログラム・絞り優先・速度優先・マニュアルの4モードを選んで使えるのが当たり前ですが、それが80年代前半に実現します。

82年から83年くらいに、露出フルモードで外装がエンプラで、というカメラが各社から出てきます。
キヤノンTシリーズ、ペンタックスSuper A、ニコンFAとか。
エンプラの採用でデザイン自由度が高まり、今から見るとかなりすさまじいデザインのカメラが生まれたりもしてます。マンガに描いたら目立つと思う。

プログラムオートを実現するために、カメラにマイコンが入るようになりました。
よって、ファインダーの中もマイコン的になってきます。
ファインダーの中に液晶表示が出てきて、電卓などでお馴染みの8セグメント表示とかができるようになってきました。

露出フルモード機・8セグ表示
簡素な描き方ですが、シャッター速度や絞りをこのように電子表示できるようになったのがこの辺、ということで。

LEDでバックライトをつけて、液晶で部分的に光を通してセグメント表示してる形です。
当時なんでLEDは緑か赤です。どっちもあります。

高級モデルだと、露出補正の設定値が表示されるとか、マニュアルモードで使うときのために露出計表示があるとか。
撮影済みコマ数をファインダー内に出してる、くらいはあるような気がする。

ただ、バッテリーのインジケーターは、わざわざファインダー内には入れないことが多いと思います。
この時代のカメラはまだまだ消費電力が低く、ボタン電池で相当長い間使え、電池切れにはそう頻々と遭遇しません。
電池が減ってきたら、ファインダー外の電源ランプが点滅するとか、あるいは警告なしに撮影不能になるとか、そんな感じです。ファインダー内に入れ込んだりはあまりしないと思います。

それから、ストロボ関係の表示もないです。
この頃はまだ、一眼レフカメラにストロボは内蔵していません。もうちょっとだけ先。


デート機能がついた一眼レフも、この時代に出てきてます。
古い写真でよく見かける、8セグの年月日が写真の隅っこに赤く焼きこまれるやつ。
コンパクトカメラだともう少し前、70年代後半からあったようです。

とはいえ、レトロな感じだからって、60年代の写真に日付入ってると間違いになります。
デジタル腕時計が売りだされたのは1969年で、これに近い技術がカメラに組み込まれるくらいこなれてこなくちゃいけないんだから。

デートも、ファインダーには見えません。
カメラ裏面に、デジタル腕時計みたいな小さな液晶がついて日付が出てます。これがフィルムに直接焼き付けるので、ファインダーには関わりません。


80年代後半 オートフォーカス化など

1985年(昭和56年)に、ミノルタがAF一眼レフカメラα-7000をリリース。
一応世界初のAF一眼レフは、PENTAX ME-Fなんですが、これは「こんなもん手でやったほうが早いわ」という代物で、売れませんでした。

α-7000は、実用的なAF。素人でも、ちゃんとピントが合った写真をボタン一つで写せた。
ユーザーもこぞってミノルタに乗り換え、αショックとまでいわれる事態が起きました。
他社もAF機の開発を急ぎ、数年で各社から出揃います。

オートフォーカスによって、ついに長年慣れ親しんだスプリットマイクロが消えます。


また、オートフォーカスの他にも、内蔵マイコンの進化で機能が増えました。
オートフォーカス自体、マイコンでの計算の賜物でしょうし。

露出については、今のデジカメにもあるシーンモードが追加されてきます。
できるだけ絞りを開いてボケを活かすポートレートモードとか、絞りを絞って被写界深度を稼ぐ風景モードとか。


それから、オートフォーカスのモーターを駆動するため、電源も小さなボタン電池から、単3・単4電池とか、CR123Aなどのカメラ用リチウム電池へと移行していきます。
そんなでかい電池が入ることで、内蔵ストロボが搭載できるようになります。


同じく電源強化により、ワインダーもつきます。
シャッターを切ったら、モーターでフィルムを勝手に巻き上げて次のコマまで送ってくれるやつ。
ワインダー内蔵以前は、レバーを親指で起こしてフィルムを送っていました。
あるいは、カメラの下部に外付けワインダーを取り付けました。相当大きく重くなるんですが、報道写真家とかの速写性が重要なところで使うものでした。

ワインダー関係は、アニメ・ゲームで音を間違えてることが多い気がします。
フィルムが存在しないデジカメなのに、ワインダーがフィルム巻き上げる音させちゃってるとか。「ぱしゃうぃーん」って。


AF・ストロボ内蔵・シーンモード一眼レフ
ということで、80年代後半のAF一眼レフを想定して。
こんなに表示が多いのは、当時としては中級以上のモデルになると思いますが。

機能が増えるということは、その機能を搭載するかどうかも、その表示の仕方も、モノによってバラバラにななります。
廉価モデルだと機能も表示も削られますし、そうでなくても必ずしも最新式の表示にしているとは限りません。

ミノルタのα-3700iってやつは、「写す」以外の機能を全部削り落としたようなすさまじいカメラで、当然表示もほとんど何もありませんでした。
またPENTAX SFXは、廉価機でもない1987年リリースの機種ですが、シャッター速度表示は画面右枠外に並んだ数字をLEDで照らす70年代風でした。



スプリットマイクロが消えて、代わって現れるAF関係の表示は、「ここで合わせるよ」という黒枠だけです。
初期のAFは、画面真ん中の狭い1点だけを計って合わせています。
ピントが合っているかどうかの確認は、画面下中央のランプ。点灯で合焦、失敗したら点滅か消灯、って感じでしょう。

ストロボの表示は、「ストロボの充電が終わってるので、今ならシャッター切れば使えます」みたいな表示。
今のデジカメみたいに、ストロボをどのように光らせるか、禁止するか、という表示とはやや違います。


枠外の情報表示に関しては、もう現代のデジタル一眼レフと、表示すべき内容も表示方法もほぼ変わらなくなってきます。
80年代後半~90年代の高級フィルム一眼レフの表示であれば、現代のデジタル一眼レフとほぼ同じにしても、そう大きな間違いにはならないと思います。
ホワイトバランスとISO感度は出さないこと、撮影枚数が36枚以上にならないこと、くらいです。


90年代 多点AF・測光モード・パノラマ

90年代なかばくらいのフィルム一眼レフは、もっとインテリジェントになっていきます。
まあちょっとネタ切れ感もあり、マニアでないと価値が理解できない機能(PENTAXのハイパープログラム・ハイパーマニュアルとか)、マニアでも使い方に困る機能(ミノルタのオートズームとか)、そういうものもありましたが、実用的な進化もあります。


実用性の高い機能としては、AF測距点の増加。
画面中央1点だけだと、撮りたい対象が中央以外にあるときに困ります。人物ふたり並んでる写真とかが代表。
それで、中央の他に左右にも距離を測るポイントが追加されました。
3点とか、5点測距くらいがポピュラー。プロ用で11点とか。

その複数点のどれを使うかの選択に関しては、キヤノンは視線が向いてる先を認識してその点を使うなんてサイバーなことをやってます。
他社はまあ、単に一番近距離な点を使ってたりとか。


それと、多分割測光や測光モード切り替え。
自動露出の露出計は、画面全体を平均的に測るものが多かった。
ですが、普通に人物写真を撮ったら、背景の上半分が明るい空になり、その明るさに引っ張られて人物が暗く写ったりしがち。
そういうのを踏まえ、画面を上下ふたつ、時代が進むともっと細かく分割し、インテリジェントに判断して適切な明るさを測るようになります。

また、「特に一部分の明るさを重視する」というスポット測光を、使いたい時に切り替えて使えるようになったりも。
まあこれは、AFより少し前からある技術ですが。


実用性は低いと思うんだけど、なぜか当時各社こぞってつけてたのが、パノラマ。

今ならデジカメやスマホでも、横に並べて撮影した複数枚の写真をつなげて、横長の幅広写真を生成したりします。
アナログでそんなんどうやってやるのかというと、単にフィルムの上と下を一部マスクして写らなくしますね。
それで、横幅2倍(比率3:1)の用紙にプリントします。
別に広い範囲写ってるわけでもなんでもないけど、横長になった写真の完成。
なんでこんなの流行ったのかな……

ちなみに、本当に広い範囲が写るパノラマカメラもありますが、それ専用のモノになります。
普通のカメラをスイッチひとつで切り替えて実現できるようなものではないです。

5点AF・スポット測光枠・パノラマ 

多点AFになると、どの点にピントがあってるかわからなきゃいけないので、ピントが合ったら合わせた点にスーパーインポーズで表示されます。
赤く点灯するのがポピュラー。

AFは他に、ワイドAFとかエリアAFという、広い範囲を見ながらピントを合わせるアプローチもあります。点から面へ。
そういうのは、横長だったり大きかったりするAF枠が描かれます。


真ん中のマルは、スポット測光のときはこれくらいの範囲で明るさを見ます、という表示。


パノラマ機能は、手動でON/OFFできます。
もしかしたら、当時は使う人も結構いたのかも。今の感覚じゃ常時オフにしますけど。


現代 デジタル一眼レフ

で、現代のデジタル一眼レフに至ります。

デジタル一眼レフでも、ファインダー内は大きくは変わりません。
AF測距点やシーンモードが増えてるとか、ISO感度やホワイトバランス、バッテリーインジケーターの表示が増えるくらいかな。
撮影可能枚数が桁違いにふえたりもします。


90年代フィルム一眼レフだと、廉価モデルは機能・表示の省略が多く見られ、全情報を表示するのは高級機に限られますが、デジタル時代だとわりと廉価な機種でもほとんど全部表示してます。
PENTAX K100D Superの製品ページにファインダー内のイメージがありますが、廉価モデルでさえこれほど詳しい表示になってます。


注意点としては、デジタル一眼レフの光学ファインダーでは、ISO感度やホワイトバランスなどの変更は、見え方に影響しません。
撮影画像のアスペクト比を、3:2ではなく16:9とか4:3などに変更できる機種もありますが、これも光学ファインダーには影響しません。

顔認識機能も、光学ファインダーでは使えません。(一部機種は制限付きで使えるみたいですが)
ミラーレス一眼の液晶みたいに、顔を拾ってそこに枠が出るとか、そういうのは無理です。


また、ソニーαとかオリンパスOM-Dみたいに、一眼レフに見えるミラーレス一眼がありますが、あれの覗き込みファインダーは中に液晶画面が入ってます。
これの表示は、一眼レフの光学ファインダーとは異なります。


ファインダーのアスペクト比は、多くは3:2で変わらないですが、オリンパス・パナソニックのフォーサーズ機の場合は4:3です。
これは元々そういう作りで切り替えではないので、ファインダーも4:3です。


レンジファインダーカメラ

一眼レフの話は長かったけど、あとは手短に行きますね。

戦前、世界を席巻していたカメラといえば、ドイツのライカでした。
まあライカも色々ありますが、レンジファインダーカメラ、日本語で距離系連動式カメラというのをやっていました。
日本の一眼レフが勃興することで過去のものになっていき、国産高級モデルは60年代末にリリースが終わり、70年代にはカメラマンも一眼レフに移っていくようです。

ファミリー向けには、でかくて重たい一眼レフと違い、コンパクトで持ち運びやすく操作も簡単なカメラとして長く使われました。
77年にコニカがオートフォーカスのコンパクトカメラを出し、各社が一斉にそちらに移行するまで続きます。


露出計つきレンジファインダーカメラ、40/90mmフレーム
ピントが合ってない状態
レンジファインダーカメラの特徴的な部分は、二重像合致式のピント合わせです。

ピントが合ってない状態でも、ファインダーの映像はボケません。
代わりに、画面中央に投影されている距離計の映像が、ファインダーの映像とズレています。
ピントを合わせていくと、このズレが小さくなり、重なったところがピントの合う点です。


また一眼レフと違って、望遠レンズをつけてもファインダーの映像は拡大されたりしません。
ライカなどのレンズ交換式レンジファインダーカメラの場合は、40mmレンズならこの範囲、90mmレンズならこの範囲といった、写る範囲を示す枠が出ます。
枠はブライトフレームといわれ、明るく黄色く光ります。

上の例は、ライカCLというカメラに90mmレンズをつけたところに倣いました。これは40mm枠が出っぱなし、あとはつけたレンズを認識してその枠が出る、となっているそうです。
他にも、常に複数の枠が出っぱなしのもの、つけたレンズの枠だけしか出ないもの、ファインダーごと交換するもの、色々あるようです。


レンズ交換式ではないレンジファインダーカメラは、国産普及品を中心に数多くあります。
その場合、撮影範囲の枠はひとつだけです。

たとえレンズ交換できなくても、「ファインダーで見える範囲が映る範囲」とはしていませんでした。
写る範囲よりやや広い範囲が見えるファインダーと、映る範囲を示す枠を表示します。


上の画像では針式露出計も描いてますが、これもない機種が多いです。
一眼レフカメラと違って、レンジファインダーカメラでは自動露出が60年代から早々と実用化されています。
自動露出なら表示の必要もないので、省略されがち。


上の例は結構高級なものということになります。
一般的なものなら、二重像合致と、撮影範囲の枠、それさえ抑えれば十分それっぽく見えるでしょう。


コンパクトカメラ

コンパクトカメラって地味に定義がはっきりしないんですが、「オートフォーカス以後の、シャッターを押すだけで撮影できるフルオートカメラ」としておきます。


ピント合わせ関係の表示は、オートなので最低限です。
ファインダーの外・すぐ右に、小さな赤・緑のLEDランプがついてます。
緑のランプが点灯していれば、ピントが合っていて撮影OKです。

画面中央にAF枠が出てる機種もあります。

赤ランプは、暗いから手ブレするぞとか、ストロボ充電中だぞとか、そういう表示に使ってます。
統一規格あるのかな。



撮影範囲の枠がふたつ、ズレてついてるのは、これは近距離撮影のときのためのものです。
近距離では、ファインダーで見える範囲と実際に写る範囲の違いが大きくなり、また中心もズレます。

ファインダーがレンズの真上についているなら、下にズレるだけなので、近距離枠も下にずらすだけです。
ファインダーがレンズの斜め上についてると、横にもずれるので、このような近距離枠になります。


これはレンジファインダーでもそうなんですが、「ファインダーで見える範囲=写る範囲」とはしないのは、覗きこんでる時にはファインダー外枠はボヤけて見えるからです。
こっちの画像だけ外枠のボヤけを再現してますが、レンジファインダーカメラでも起こるはずです。

一眼レフの場合は、外枠はファインダー接眼部の枠ではないので、ボヤけません。


80~90年代のファミリーカメラはこんな感じです。
90年代の黎明期のデジカメも、液晶ファインダーではなく光学ファインダーを使う前提になっている機種があって、そういうものではこんなファインダーでした。


低価格カメラと、デジカメの光学ファインダー

写真フィルムって優秀なもので、実のところ、別にピントを合わせたり露出を合わせたりしなくても、適当にシャッター切ったら、それなりには写せます。

究極的なのは、写ルンですのような使い捨てカメラ。
ピントは大体どこにでも合うように。
露出も大体いつでも合うように。夜になったらフラッシュ光らせる。

使い捨てでないフィルム交換可能なカメラでも、写ルンですと同等の撮影機能だけ備えた簡素な超廉価モデルがありました。

こういうのは、シャッター押すだけしか操作がないから、ファインダーにあれこれ表示する必要もない。


もう少し凝っても、ピントを「人の写真を撮る」「集合写真を撮る」「景色を撮る」程度の大雑把さ、露出も「晴れ」「曇り」「室内」から選ぶだけ、という程度のカメラが古くからありました。



この手のカメラは、ブライトフレームもない外枠だけのファインダーです。
物によっては、レンズすら入っていない素通しの覗き窓です。
そんな厳密な撮影するわけじゃないんだから、これで十分。
フラッシュがついてるモデルだったら、フラッシュ充電中のランプくらいはあるかも。


それから、コンパクトデジカメの光学ファインダーも、大抵は枠だけでした。
大体2005年くらいまでは、コンパクトデジカメにも覗きこむタイプの光学ファインダーがついていました。
液晶ファインダーと違ってバッテリーを消費しないので、電池が弱かった時代には有効ではあったんです。

ただ、あくまで緊急用っぽい扱いだったのか、内容は極めて貧相でした。
ブライトフレームのないただの枠で、表示も脇の緑/赤LEDランプだけ。
一応ズームすると合わせてズームするものの、見える範囲と映る範囲がだいぶズレてるし、小さくて見づらいし……
で、消えていきました。


表示がなさすぎてマンガやイラストに描くのが難しい気はしますが、ボヤけた外枠を描くくらいですかね。


デジカメの液晶ファインダー

現物見てください。以上。
多機能すぎて、代表例にまとめるとか困難で。



まとめ

長々やったんで表にまとめました。


この記事が、「なんでレンジファインダーなのに一眼レフみたいにファインダーボケてるんだよ」とか私にケチつけられる人を減らすことに役立ちますように。